蓋を開けた

数年前、日本中は進撃ブームに覆われていた。それは私も知っていた。テレビでは特集が組まれ、本屋ではドカンと宣伝パネルがコミックの横に置いてあった。アニメ主題歌は紅白で歌われ、展示会には押し寄せる人々、数々の商品とのコラボも飽きる程見かけた…。しかし私は全く興味がなかった。手を出す気になれなかった。

ブームが起こる数年前、本屋の棚に進撃の巨人の試し読みの薄い冊子が置いてあった。私は何気なくそれをパラパラ読んで、読み終わった後には重くドンヨリとした暗い気分になっていた。冊子の内容としては超大型巨人が現れた所から、エレンの母が、食われる直前に「行かないで…」とつぶやいた後食われてしまうシーンまで。

今になって思うが、なんであの場面を試し読みとして抜き出したんだろう…。当時中学生だった私は、なんでこんな憂鬱で心が痛くなるような漫画を読んでしまったんだと後悔した。それ以来アンチ進撃の巨人として、どんなに世間が盛り上がっていようとそれを冷たい目で見てきた。

そして今になって

AbemaTV でアニメを再放送しているのをチラッと観て自分の中のイメージが崩れた。全話視聴しコミックを全巻集めサントラを買い、最近開催されている展示会に行こうとしている。

あの時、自分の中でシャットアウトせずにもうちょっとだけ深く突っ込んでいたら、あの盛り上がりの中行われていた様々な催し、きっと紅白もリアルタイムで観れただろうし上野の森美術館の展示会にも行けただろうなー、と少し寂しい気持ちになった。