朝起きる前のメモ帳から

 美しい思考、素晴らしい発言、そんなものは存在しないと頭の中で繰り返される。

 目は閉じていても、弾ける電気信号の光によって内部に情景が映し出される。それは白く殺風景な一室であったり、青々とした草原、あるいは点々と物語にもならないような細切れの記憶である。いつしかそれらが大きな一つの大作になる事を心の隅で望んでは、敢えなく砂糖菓子のように消えていく。

 こねくり回された思考もどきのなにかは、薄黒い憂鬱へと置き換わっていく。「爽やかな朝」という幻想は夏にしか存在しないようだ。今はただ暗く冷たい空の色だけが、カーテンの隙間から見えているのみである。